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油田新聞_2015.05.26

おすすめ映画の『百日紅』

 仕事と介護の隙間をぬって、『百日紅』というアニメーション映画を観ました。副題にmiss Hokusai とあり、

葛飾北斎の娘の話だそうです。北斎にはお栄という娘がおり、史実に基づいたアニメーションです。原作者の

漫画家杉浦日向子さんは、江戸風俗研究家としても有名な方で、長らくNHKで江戸の風俗にかんする番組で

解説者を務めておられ、私もその番組のファンでしたが、残念なことにお若くして亡くなってしました。杉浦さんの

作品のひとつ、『合葬』は実写版でこの秋公開とか。

 葛飾北斎は、墨田区が誇る浮世絵師には違いありませんが、生涯に何十回も転居していますし、晩年は

信濃国(長野県)小布施に長くいましたし、まあ、あまり住むところに生地に愛着があった人には思えないですね。

とはいえ、墨田区の大きな文化遺産のひとつには間違いなく、もっと北斎について「発信」してもいいのでしょう。

 この北斎の三女がこのアニメーションの主人公お栄(葛飾応為)です。彼女は父と同じく「描くこと」に憑かれて

いたようですが、その絵は見事です。アニメーションの最後のほうに彼女の代表作『吉原夜景図』が出てきます。

父と娘はとにかく描くだけのために生きていたようで、転居の理由も部屋が汚れてどうしようもなくなると転居した

とも言われています。私がこの映画で強く印象に残ったのは、お栄の自由な生き方です。父と同じ生き方を女性の

お栄が出来たということに改めて驚きました。お栄は掃除もせず、家事は一切しない。女性でありながら「女らしさ」に

縛れることなく、こういう生き方ができる時代が江戸の町人文化のなかにあったーそのことを教えてくれる映画です。

 カミーユ・クローデルというロダンの弟子であった女性彫刻家は、北斎の絵に衝撃を受けたそうですが、

カミーユは女性であるがゆえにロダンに抑圧され続け、また、彫刻家としての彼女を認めようとしない家族や

社会から排除されて精神を病んでいきます。ロダンの作品の一部にはかなり彼女の手が入っているとも

言われていますが、彼女の作品は「ロダンの物まね」と蔑まれます。カミーユがお栄の作品を観る機会が

なかったのは残念です。

 墨田ゆかりの北斎とお栄の映画、いかがでしょうか。おすすめです。

(T.Y.)


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